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女性のために開発されたヤマハ・パッソルS50

ヤマハ・パッソルS50の特徴

1970年代後半から1980年代前半は、日本のバイク史において非常に重要な時期であったと言えます。
国内経済が上向きになることでバイク市場そのものが拡大し、そのニーズに応える形でメーカー側が次々と新しいバイクを世に送り出していました。
一方、その多様化するニーズに応えられる技術やノウハウを各バイクメーカーがそれまでの経験で培っていたこと、さらにメーカー自らが新たなニーズの創出を積極的に仕掛けていたことから斬新なモデル・コンセプトのバイクが生み出されることになりました。

そんな活気ある状況において、バイク市場を牽引していたのが今もライバル関係にあるホンダとヤマハです。
激しいシェア争いを展開していたことから、両社の頭文字をとって「HY戦争」などとも呼ばれていました。
ヤマハ・パッソルS50は、そんな時代背景だからこそ生み出されたバイクと言えるでしょう。

このバイクの最大の特徴は、女性をおもなターゲットに開発されたことです。
現在では女性がバイクを乗るのも当たり前な環境でしたが、このバイクが登場した1977年は必ずしもそうではありませんでした。
ホンダと激しい競争を繰り広げていたヤマハが、女性という「新しい顧客層」を開拓するべく新製品の開発を手掛けました。
その成果がヤマハ・パッソルS50なのです。

ヤマハ・パッソルS50の特徴をひと言で表せば、「軽快で斬新」ということになるでしょう。
清潔感と親しみやすさを重視した明るいカラーリングとデザインはまさに女性にアピールするもので、そこに操縦性、扱いやすさを重視した仕様を取り入れました。
こうしたヤマハのこだわりは、当時のキャッチフレーズであった「やさしいから好きです」に象徴されています。

ヤマハ・パッソルS50の仕様

扱いやすく親しみやすい、そして「やさしい」バイクを実現するために採用されたのが、自動遠心クラッチと手動リアブレーキです。
これらは当時としては斬新な仕様であり、バイク好きの間でも大きな話題となりました。

このヤマハ・パッソルは現在でも代を重ねて製造・販売されており、2003年にはグッドデザイン金賞を獲得しています。
この点からも、1977年に登場したヤマハ・パッソルS50がいかに時代を先取りした魅力的なデザインを備えていたかを窺うことができるでしょう。
HY戦争という言葉はすでに過去のものとなりましたが、現在でもホンダとヤマハはバイク市場において良きライバルのような関係で素晴らしいバイクを世に送り出しています。
このヤマハ・パッソルS50は、そんな両社のライバル関係がバイク市場の発展にもたらした影響を象徴するモデルとして評価することもできそうです。